96人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず売春をしていたわけではないという言葉を信じることにしたジンは腑に落ちなかったが、ナギの言葉に従うことにした。
家に帰り、5人での夕食を終えると、ジンとナギは空き地に向かった。そしてジンは空き地に着くや否やナギに詰め寄り声を荒げる。
「姉ちゃん説明して!」
姉はその様子に申し訳なさそうに笑う。
「その前にひとつだけ約束して。もしこの話を聞いても、なんとも思わな…いのは無理だろうけど、お姉ちゃんを嫌いにはならないでね」
「わかった、約束する。」
「よし! どこから話そうかなあ。ジンは5年前にまだお母さんが生きていた時のこと覚えてる?」
「あんまり覚えてない。それがどうしたの?」
「5年前にね、私がお母さんを殺したの」
そう寂しそうな笑顔を浮かべてポツリポツリとナギが話し始める。
「どういうこと?」
「言葉通りの意味だよ。その時私はジンかお母さんかどちらかを助けなければならないと思ってたし、実際そういう状況だった。そして私はジンを選んだ」
「えっ? ちょっと待って! 意味がわからないよ!? 母さんは俺のせいで死んだ……」
「そんなわけない! ただ仕方なかったの。お母さんもジンのことを私に任せるって笑いながら死んでいった。だからジンがそれに対して責任を感じることはない」
「……じゃあ一体何が5年前にあったの?」
「5年前にね……ジンとお母さんはある病気にかかったの。国中で蔓延した病気でね、ジンも聞いたことがあるんじゃないかな。オルフェンシアっていう悪神オルフェが蔓延させたっていうやつ。一応治療薬はあったんだけど、それがとっても高くて、当然のように私には買うことができなかった」
告解のようなナギの言葉を、混乱する頭でジンは黙って聞いていた。
最初のコメントを投稿しよう!