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「今日貰いに行ったお金は、最初に契約したときにもらうはずだったお金のあまり。貴族の人は娘を助けてくれたお礼は必ず返すと言って、ちゃんと約束を守ってくれた。でも大金を持ってスラムに帰るとすぐに盗まれるから、こうしてあの人に預けておいて、時々お金をもらいに行っているの」
ナギが話し終えると、二人の間にしばらく沈黙が流れる。そして恐る恐るジンがナギに尋ねた。
「……それじゃあ、姉ちゃんはあとどれだけ生きられるの?」
その言葉にナギはより一層顔をしかめる。
「……正直わからない。でももうあまり長くはないと思う」
「なんで! どうしてそんなことしたんだよ!? 俺のせいで姉ちゃんが死んじゃうのかよ! 意味わかんないよ! なんで今まで言ってくれなかったんだよ。どうしてあと少しで死んじゃうのに、その原因を作った俺なんかに優しくしてんだよ!」
ジンは泣き喚きながら、ナギに詰め寄る。そんな慟哭するジンを見てナギは優しく抱きしめながら何度も謝る。
「ごめんね。本当にごめん」
「どうして姉ちゃんが謝るんだよ……姉ちゃんのためにって一生懸命修行だって、手伝いだってしてきたのに、なんで俺が姉ちゃんが生きる邪魔になってんるだよ。こんなことなら助けてくれないほうがよかった。姉ちゃんが生きられるならそのときに死んだほうが……」
パン!!!
鼻水を垂らしながらボロボロに泣くジンがその言葉を言い終える前にナギが頬を強く叩いた。
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