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「私はあんたのせいで死ぬんじゃない! 私がそうしたいって思ったからだ。それにあんたは知らないかもしれないけど、オルフェンシアに罹った人はすぐに魔物になっちゃうんだ。だから私はジンとお母さんを助けるためにできることをしたんだ。ジンとお母さんがいなかったら私だって死のうと思ってた!」
この病気がオルフェンシアと名付けられたのは、この病気に発症して、体力が落ち、生命力を失った人間のほとんどが魔物に変化してしまうからだ。その様はまるでオルフェに選別されるかのようだった。
「お母さんは助けられなかった。でもジンは助けられた。私はそれを誇りに思っているし、今でもその判断は間違っていないと思ってる。だからジンが死にたいなんて言うのは腹が立つ。それはあんたに生きて欲しいと思ったお母さんと私を侮辱する言葉だから! お母さんも私もあんたには笑いながらずっと生きて欲しいって、あんたに幸せになって欲しいと思ったから!!」
「っ、それでも俺は姉ちゃんに生きて欲しい! 姉ちゃんが死んじゃうのは嫌だ!」
そう言ってジンは空き地から飛び出した。後ろからナギが呼び止める。
「ジン!!」
その声を無視して必死に逃げた。彼自身なにから逃げようとしたのかわからなかった。おそらくその胸に重くのしかかる真実から、姉を喪失するかもしれないという恐怖から、そして自責の念から逃避したかったのだろう。気がつけば彼はミシェルに教えてもらった穴を抜け街の外に出ていた。上を見上げれば空には重たそうな雲の隙間から、綺麗な星が輝いていた。
「姉ちゃんが死んじゃったら、もう笑えないよ……」
ジンは狂ったように泣いた。
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