第3話 日常

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 ジンは急いで髪と服を整え、流れるようにその手をズボンのポケットに突っ込んだ。そして3人に声をかけた。 「よっ、みんな、俺も修行に混ぜてよ。っていうより、なんで声かけてくれなかったんだよ」 レイとザックは手を止めてジンを見て微笑みながら、レイが 「お前、ナギ姉さんに甘えて寝たじゃん」 そしてザックがニンマリといやらしい顔を浮かべる。 「そうだよ羨ましい。むしろ代われよ。このシスコンが」  ザックはナギとも歳が近いためか、彼女に惚れているらしかった。だがジンはこいつに姉ちゃんは渡さないと密かに思っていた。彼は自分より1歳上のレイにも、5歳上のザックにも一度も(法術を抜きにすれば)喧嘩でも剣術でも負けたことがなかったからだ。自分よりも弱い相手に大切な姉を任せることはできない。というよりも、よりにもよって、ミシェルの前で人のことをシスコンと言うとは何事だとジンは思う。彼はシスコンと呼ばれるのが心底嫌いなのだ。 「姉ちゃんはお前にはもったいない。そこらの女の子で満足しとけ」  そこからはいつものように売り言葉に買い言葉で、殴りあいに発展するのだが、今日はそうしようとした直前にミシェルがジト目をしながらからかうように声をかけてきた。 「ふふっ。ジンはナギお姉ちゃんが大好きだもんねー。いっつもお姉ちゃんにべったりしてるし。甘えん坊だもんね」 この援護射撃にはジンはたまらず、舌打ちをしながら顔を真っ赤にしながら心にもない悪口を言ってしまう。 「っ、そんなことねーし。お、お前馬鹿じゃないの。ちゃんと目えついてんのかよ。頭おかしいんじゃね!?」 「なによ、事実じゃない」 とニヤニヤ笑いながら言い返してくるではないか。カッとなったジンはつい彼女がいつも気にしていることを言ってしまう。 「ばーか!このそばかすおばけ!!」  ジンにはよくわからないがミシェルはシミひとつないナギの顔とそばかすのある自分の顔とを比べてコンプレックスを抱いているようなのだ。それを指摘されるとひどく傷ついて、いつも泣いてしまう。案の定、ミシェルの目にみるみる涙が溜まっていき、顔を赤くしていく。 「ジンのばかー!!」
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