第3話 日常

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 そう言って彼女は走り去ってしまった。そんな後ろ姿を見て、『やってしまった』という後悔を顔ににじませて渋い顔をしているジンの肩を組んで、ザックがいやらしい笑みを浮かべながら、話しかけてくる。 「ジンくん、ミシェルに『そばかす』は禁句だよ。帰ったらお前、ナギさんのスペシャル折檻コースだな」  ジンは憂鬱な表情を浮かべる。 「姉ちゃんと絡む絶好の機会だよ? 変わってあげようか?」  一応聞いてはみたが、当然のようにザックは断ってきた。レイはそんなジンたちを見ながら二人を諌める。 「今のはジンが悪いよ。女の子にはもっと優しくしないと。それとザックはジンをあんまりからかうなよ。ナギ姉さんの印象が悪くなるかもよ?」  ジンはもう修行する気分でもなくなり、さっさと切り上げて家に帰ることにした。そんなジンに付いて2人も帰ることにしたらしく、片付け始めた。  3人が家路に着いてしばらく歩いたところで、突然角から飛び出してきた男がジンにぶつかってきた。尻餅をついた彼が顔を上げると、そこには軍服のような格好をして帯剣している大柄で無骨な男がいた。二メートル近い身長に、戦傷を隠すためか右目に黒い眼帯をつけている。 「何すんだよ!」 ジンが声を荒げる。 「すまん。少々急ぎの用があったんでな。坊主たちはこの辺りに全身黒ずくめの男を見かけなかったか? 身長は大体160センチ程で、白髪で細身の男なのだが」  ジンの黒髪、黒目を見て眉を少し顰めたがすぐに表情を元に戻して、手を差し伸べて尋ねてきたので、ジンはその手を払いのけて、訝しげに睨みつける。 「いや見てないよ。それに騎士がこんな場所に何の用だよ」 「見てないなら構わん。ところでもしかして坊主たちはこの辺りの住人か?」 「ああ」 「先日から街で人喰い事件が発生しているんだ。すでに何人もの人間が死んでいる。それで魔人による事件である可能性が示唆されていてな。それを受けて先日ナディア様から神託がなされた。それによるとそのうちこの辺りでひどいことが起きるらしい。いまの内に逃げた方がいいぞ。それじゃあ俺はその容疑者の男を追いかけないといかんので、ここで失礼する」
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