女の白い肌。男はゴクリと喉を鳴らす。

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助ける?彼女は12階から落ちたんだぞ? ゆるゆると重い腰を上げ、ガクガクと震える足を 動かし、ベランダから恐る恐る下を覗き込む。 しかし夜の闇で地面が見えず、彼女の姿を確認する 事が出来ない。 俺は下に降りなくては・・・とベランダから室内に 向き返る。 そして、ハッとする。 先程までの俺と同じような状況が、俺の下の階でも 繰り広げられていたらしい。 部屋の中に、男と女。女の手にはダガーナイフ。 女からバレンタインの贈り物を渡されたらしい 俺の下の階の部屋の住人は、そのナイフを首に 突きつけられながら、赤を切るか青を切るか・・・、 愛を試されている。 男の震える手で持ったペンチが、 ゆっくりと赤い糸を・・・・プツリ。 男は愛の試練を乗り越えられなかったのだ。 俺は巻き上がる爆風に身を委ねながら、こんな事 ならば俺も赤い糸を切って、彼女と共に逝けば よかったかな・・・と考える。 舞い上がった身体は彼女の潰れた身体の隣へと 添い遂げるように潰れて、落ちて、横たわる。 ああ愛のバレンタイン。 その愛は血潮のように赤く燃え上がる。 ハッピーバレンタイン!
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