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月光海月
僕は夢を見た。その夢とは、真っ暗の海の中を一匹の大きな海月が白とも黄色ともつかない光を灯しながらゆらゆらと泳いでいる。その周りではサンゴや魚達がその海月を歓迎するように踊っていた。僕はそんな中を海月と一緒に優雅に泳いでいる。そんな夢だ。僕はその夢を見てから毎日この浜辺に来ている。いつか会える。そんな気がして……
この事を知ったのは、あの夢を見てから数ヵ月後だった。どうやら僕が夢で見た海月は、本当に存在するらしい。名前は月光海月。それは日本海溝超深海に生息する百年に一度満月の時、浜辺まで浮上してくる幻の海月である。月光海月は月の光を浴びると、その光と同じ光を体内から発して暗い海の中を明るく照す。その光は、あまりの美しさ故に見た者の心を奪い喰らってしまうという云い伝えがあった。僕の町の漁師の間では今年の春からその海月が現れるという噂で持ちきりだった。その噂はたちまち町の人々にも広がり、伝説を信じていたか否かは別として連日連夜カメラを持った多くの人達がこの浜辺に訪れていた。
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