チョコ十夜

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 チョコかと思ったら、土団子だった。  しかもズボンに擦りつけて表面をテカテカにしたやつ。  最初は地面に叩きつけてやろうと思ったけど、その完成度の高さに見とれてしまう。  チョコかと思ったら、金塊だった。  その物理的にも精神的にも重たい贈り物を丁重にお断りをする。  金で僕の心は手に入りやしないのだ。  チョコかと思ったら、心臓だった。  まだ新鮮でびくんびくん動いている。  僕は親切に、ドナー登録をお勧めした。  チョコかと思ったら、千代子だった。  生憎、人一人を養うほどの甲斐性はまだない。  チョコかと思ったら、アバブチュララクッスだった。  僕はアバブチュララクッスをシートゥンホッポポスし、クシュマントーダしてやった。  チョコかと思ったら、旧神だった。  それを食べるたびにSAN値ががりがりと削られてゆき、正気を失う一歩手前でお帰り戴いた。  チョコかと思ったら、泉の女神さまだった。 「あなたの落としたものは市販のチョコですか? それとも手作りチョコですか?」  いいえ、僕はあなたに対して恋に落ちました。  チョコかと思ったら、将棋の駒だった。  あなたの心を詰ませてみせるわと言われたけれど、将棋崩しに詰ますも何も無い。  チョコかと思ったら、スライムだった。  食べてみるともちもちして意外に悪くない。  ただし次の日に、スライムがお尻から出て来たけど。  チョコかと思ったら、チョコレートだった。  やった! これこそ僕が求めていたもの。  きっと本命だと思っていたら、消費期限間近だから早く食べてねと言われる。  ギリギリチョコレートだった……。
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