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虹色のハラワタ
振り向いたときには、取り返しのつかない事になっていた。
今まで歩んできた道に、僕の臓物が転がっている。
僕はたまらずに声を上げた。
空っぽになっていた身体に気付くこともなく、その光景に見入っていた。
立ち尽くしたまま眺めてから、どれくらいが過ぎただろう。
だって、僕の歩んできた軌跡がそこに描かれていたんだ。
赤、青、白、紫、黄、橙、桃……
斑に散りばめられた僕だったモノは、光に照らされて輝いている。
遥か彼方から続く僕の軌跡だ。
ずっとずっとずっと、あてもなく歩く旅路ももうすぐ終わる。
宝石みたいに輝く臓物からは既に腐臭が漂ってきているし、中身の無くなった僕の身体も乾き始めてから随分と経っていた。
ああ、もう自分が立っているのかすら曖昧だ。
僕を包んでいた腐臭も感じることが出来ない。
きらきらとしていた臓物がぼやけて見える。
主張をやめた色が溶け合って、混ざり合って一つになろうとしている。
これが、僕の見る最後の世界だ。
今までの旅路が長い虹に変る。
この虹は僕が作ったのだ。
周りに合わせた色にしか染まれずに、何も残せなかった僕が作ったのだ。
僕は最期に、僕だけの宝物を見つけたのだ。
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