青空の先に

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「拓海──おまえいったい何をしている」 「よう、親父。見て分かんない?」  ベッドで立てひざをつきながら座る拓海の余裕な態度と声音。  彼と絢也のかわす言葉の意味が理解できず混乱する千瑛、親父とはつまり絢也は拓海の父親だという関係性につながらない。いや、脳が拒否をするのだ。  一歩も動けず顔さえ上げることもできず、うつむき凍りつく千瑛。そんな千瑛は置いてけぼりのまま、拓海と絢也は尚も質問に質問を重ねていく。 「なに? どういう意味だ、はっきりと答えろ! どうしておまえは裸なんだ、千瑛くんに何をしたっ!」 「それ言わせんの? 彼女のまえで。千瑛の母親だろ、空気読めよ」 「──おまえ自分のやっていることが分かっているのか」 「親父だってよろしくやってんじゃん、俺がどこでナニしようが勝手だろ」 「なんだと!」  言葉で攻め合うふたりは、ますますヒートアップする。  殉也の妻が息子を残し去っていった経緯は母から聞かされ知っていたが、まさかその息子が拓海だったなんてと千瑛は心中穏やかではない。  しかも母の彼氏である絢也と肉体関係にあり、彼の息子ともたった今結ばれたばかりなのだ。全身の血液が凍っていくような感覚がして、立っているだけでやっとだった。  居直る拓海、掴みかかろうとする絢也。そこへ母、恭子が一喝する。
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