青空の先に

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 鼓膜に警報音が響く。どうやら駅近くまで走ってきたらしい、目のまえは踏切だった。このまま電車が通る瞬間に飛び込めば楽になるだろうか。  嫌なことから解放され心が自由になるだろうかと、虚ろな目で下りる遮断桿(しゃだんかん)を見つめながら千瑛は考えた。その時だ。 「千瑛っ」  背後に迫る声は拓海のものだ。身体と心臓が跳ね萎縮する。逡巡したのち足が独断で動いていた。迫りくる電車、線路を遮り駆け出す千瑛。 「千瑛──っ!」  過ぎ去る電車の轟音に鼓膜が揺れ、喧噪もノイズすら消えてしまった。  真っ白な無音の世界に温かな熱が加わる。踏切を渡る際、ふわりと身体が浮く感覚がした。目を閉じ身を縮ませていると、拓海が千瑛を抱きかかえて踏切を脱出したのだ。  潰れてしまいそうなほど強く抱きしめられ、苦しさと彼の体温に千瑛は我に返った。
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