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「拓海」
「ばか。死ぬつもりかよ」
「ごめん。ぼく……」
「いや、悪りぃのは俺だ。千瑛を傷つけ追い詰めて、踏切に飛び込ませちまった」
遮断桿が上がり、通行の邪魔にならないよう道の端に移動する。
「ううん、拓海は悪くない。ぼくと母さんの責任だから」
泣き狼狽え絶望し、そして最後に覚悟を決めた千瑛。拓海にすべてを打ち明けた。
「──知ってたよ」
「えっ」
「言ったろ、調べたって。千瑛と親父の関係も」
拓海の言葉に絶句する。どうやらホテルに入っていくところを見られたらしい、すべてを知ったうえで千瑛に近づいたのだ。
「軽蔑するだろ」
「いや。いつもおまえ、死にそうな顔してたもん。おおかた親父に強要されてたんだろ?」
「……うん、事情があって。全部話すよ」
「今はいい。まずは俺の本当の気持ちを聞いてほしい」
そう言うと拓海は千瑛と目を合わせ、「ごめんな、嫌いとか言って。あれも嘘だから。つか記憶から取り消して」と頭を下げる。そして───
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