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チョコミント・コーション
かわいい、かわいい、なんてみんな言うけれど、私には分かっている。こんなかわいさは長続きしない。いつまでもかわいがってもらえるかわいさじゃない。
鏡を見る度に思う。顔がかわいいわけじゃない。
未成熟な身長とか、聞く人によっては小馬鹿にされたように感じる幼い話し方とか、人より半歩小さく歩くところとか、そういう姿を大雑把な目で見ながら、みんなで「サキちゃんかわいい」と思い込むことで、私のかわいさは成り立っている。集団での自己暗示みたいに。
暗示はいつか解ける。かわいがるのにちょうどいい小動物が、よく見たらそんなにかわいくないとみんなが気付いたとき、そこに私の居場所はあるだろうか。顔面微妙なちんちくりんの綿菓子女子なんて、ただイタいだけだ。
高校生にもなれば大人っぽい美人さんが圧倒的に支持を得るに決まっている。
例えば、薄葉さんのような。
薄葉さんはとっくに確固たる地位を築いているけれど、私達中学生の手に余る。だから薄葉さんはいつも一人だ。子供達がはしゃいでいる中心で、たった一人、薄葉さんだけはどこか遠い景色を眺めているような気がする。
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