そいつの名はBENという

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BENは後藤の大腸の中でこの時を待っていたのだ。最終カーブのコーナーからファイティングポーズを取りながらBENは後藤の肛門に詰め寄ってきた。 BENは軽く2.3回、内側から肛門をノックした。"これからいくぜ"という宣戦布告である。 この瞬間、後藤の顔が険しくなった。 1stラウンド、BENの軽い左ジャブが後藤の肛門を小突いた。 後藤は顔を歪ませて呻く。この軽いジャブですらも後藤を唸らせるには十分な鋭さを持っていたのだ。 どうする!?途中の駅で降りるべきか!? いやここで降りたら確実に面接の時間には間に合わない。まだ軽いジャブだ、これは耐えなければ。 後藤は電車を降りなかった。後藤の額には汗が滲んでいる。 BENの手始めのジャブを後藤の肛門がなんとか防ぎ切ると、すうっとBENは後退した。BENは根っからのアウトボクサーなのだ。 BENは一時、肛門と距離を取った。 しばし訪れる後藤の安息の時。 しかしそんな時間も長くは続かない。 まもなくすると2ndラウンドのゴングが鳴った。BENは軽快なフットワークで再び肛門との距離を詰めてきた。もちろん後藤の肛門もガッチリとガードを固めている。来るなら来い、と。 しかし、BENはそのガードのうえからワンツーで強烈な右ストレートをかましてきた。 後藤は呻きながらも目を閉じ、肛門に意識を集中する。後藤の肛門もやわではない。テニスで鍛えた後藤のケツ筋も肛門をサポートし、なんとかBENの右ストレートを食い止めた。 しかし、後藤の肛門もすでに限界に近い。ここからは時間の問題であることは誰の目にも明らかであった。 昨夜食べた安居酒屋のたこわさや粉物とよく分からない焼酎とが腸内で化学反応を起こし、BENにパワーを与えているようだ。 BENは再びすうっと引いた。来たるべき次のタイミングに備えているのだ。 苦悶の表情でかろうじて立っている後藤の頭の中には、もはや面接のめの字もない。 しかし、後藤は途中下車をしなかった。 BENが肛門と距離を取っているうちに、後藤は奇跡的に面接会場の最寄り駅にまで辿り着いた。 この駅でトイレに寄っていくぶんには時間的にもギリギリ間に合いそうだ。 しかし、ことはそう簡単に運ばない。 改札を出る直前に再びBENが一気に距離を詰めてきたのだ。
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