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 帰宅すると、娘はもう眠っていた。  いつもより帰るのが遅くなってしまったから仕方ないが、少し残念に思いながらそっと寝室のドアを閉めて、洗面所に向かう。 「パパが帰るまで起きてるって言ってたんだけどね。今日保育園で鬼ごっこしたんだって。ずいぶんはしゃいだみたいだから、疲れたのね」  妻が笑いながら言う。  六才になる娘のひとみはおてんばだ。将来の夢はお姫さまになることで、アニメのヒロインに憧れて髪を長く伸ばしている。かわいくてたまらない娘だが、最近パパは邪険に扱われることも多く、寂しい限りだ。  風呂に入り、妻の用意してくれた夕飯をもそもそと食べる。食器を洗い、リビングに戻ってくつろいでいると、妻が手に何か持ってやってきた。  鮮やかな赤にハートがプリントされた包装紙と、ワインレッドのリボンでラッピングされた、平たい箱だ。既製品ではなさそうだ。  もうすぐ日付が変わるが、今日は二月十四日。世間でいう聖バレンタインデーだ。  結婚してからも、妻はバレンタインにチョコレートを用意してくれていた。思わずニヤニヤしてしまう。
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