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「でも、これ本当にその彼女からなのかしら?」
「けど、他に心当たりはないし……」
「ふぅん……とりあえず開けてみましょうか」
妻がワインレッドのリボンをほどく。いささか雑にハート柄の包装紙を破くと、そっけない白い箱が顔を出した。
どういうわけか私は、中身はブラウニーなような気がしていた。彼女が話していたからだろう。平たい箱はそういうものを入れるのに適しているように思った。
妻が箱のふたを持ち上げた。
「え?」
入っていたのは、チョコレートではなかった。ブラウニーでもない。
中には白い紙――写真を裏返したものに見える――が束になって入っていた。
「なんだ? これ」
私が呟くと、妻は一番上の一枚を手に取り、ひっくり返した。
それはやはり写真だった。
公園でブランコに乗る女の子の姿が写っている。こちらに視線は向いていない。長い髪を耳の上で二つに結わえて、笑っている。
「なんで……」
妻は写真の束をひっくり返した。二十枚以上あるだろう。
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