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まぶたの裏に光を感じた。冷たい風が肌を刺した。なぜ私はこんな場所にいるのだろう。目を開けると私の視界を遮るものは何もなくて、一歩踏み出せば、この世とおさらばさえできるみたいだ。急に冷や汗と震えが始まった。確かさっきまで、山田のやつを虐めていたはずなのに、なんで、いつの間に、立場が逆転してしまったんだ? 踊ってみせろと確かに言った。でも踊るのは山田で、私ではないはずだ。山田にやらなければ私がやられてしまう、そんなスクールカーストの中、私はやりたくもないことをやっただけだ。なのに、なんでこんな仕打ちに私があわなくてはいけないのだ。 制服のスカートについた埃を叩きながら、山田は私に近づいてくる。 「どうして?って顔に書いてありますよ、立花さん。なぜって?」 私は顔中の穴という穴から水分を出し続けた。 「せっかくのお化粧が台無しですよ。別に立花さんが悪いわけじゃありません。たまたま。たまたま運が悪かっただけ。お気に病むことはありません」 そして山田は私の耳元で囁いた。 「さあ、狂れて」 私は緊張の糸がとけるのを感じた。山田はそれを確認したかのように私の両手とフェンスを繋いでいた紐を緩めた。私は躊躇なくその場で踊ってみせた。 「あははははは」 私は笑いが止まらなかった。 「できるのよ。ええ、そうよ!私だって、やればできるのよ!」 「ええ。ええ」 山田は微笑んでみせた。 「立花さん、先ほどよりも楽しんでいただけましたか?」 「最高よ!それに今の私はなんだってできるのよ。もう怖いものなんて何もないわ」 「そうですか。それはよかったです」 山田はさらに微笑んで襟を正した。 「お戯れの時間は終わりです。では、立花さん、御機嫌よう」 「えっ」 風が吹いた。あっけないものだ。三日天下って言葉が頭の中に浮かんだ。私はその風とともに一瞬空に舞い上がった。ようやく自由に踊れた。誰に文句も罵倒もされず、ただただ楽しく自由に。でもそれは一瞬だけで重力には逆らえず、私は地面に吸い寄せられていった。
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