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スマートフォンをポケットにしまう前に、動画投稿サイトに投稿されたある動画をしばらくながめていた。その動画では、アウヤンテプイの上で、あの虹色に輝く民族衣装を身にまといながら踊り歌うテレサの姿を見ることができた。偶然なんかじゃない。ぼくは奇跡的に、彼女の動画を発見し、SNSで知り合い交流し、ぼくの母さんと彼女が出会い、そして彼女と少しばかりでも言葉を重ねることができたんだ。それを奇跡と言わずして何と表現するのだろう。
ぼくは、スマートフォンをポケットに閉まって、青空のもとひとりぼっちの家へと、ゆっくり歩きはじめた。
苦い。まだ、コーヒー豆チョコレートのあの苦味が、口の中に残っている。
ふと青空を見上げると、チョコのなる木の歌っている声が聴こえた。
おわり
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