チョコのなる木

5/10
前へ
/10ページ
次へ
 寒い朝だった。学校に行きたくないなと思ったのだけれど、ぼくは、今日学校が休みなのを思い出し、二度寝(にどね)しようと思ったんだ。けれども、そのとき大事なことを思い出したように、ぼくはあわてて飛び起き、すぐさまスマートフォンでSNSのダイレクトメッセージを確認した。  そこには。スペイン語で文字が打たれていた。翻訳(ほんやく)サイトで日本語に翻訳すると、こんな感じの内容だった。  Bananachoko何で。“A Perfect Day for Bananafish”はbanana。バナナです。Chokoにチョコレートでしょう。Macchachokoがmaccha何かです。    このままこの訳された日本語を読んでも、本来なら意味がわからないだろうけれども、ぼくはなぜだかその真意を読みとり、こう英語で返信した。 I love stories written by J.D.Salinger. Matcha is a kind of green tea. I wander why chocolate is created from cacao beans.  ぼくがその英語をSNSの通信相手に送ると、その返信をちょっとの間待っていたんだけれど、ぼくはいつのまにか、再び夢の世界へと迷い込んでしまったようだ。夢の中での彼女は、必死に舞踊(ぶよう)の練習をしていた。例の七色(なないろ)に輝く衣装(いしょう)を身につけながら。コーヒールンバだっけ。日本でも聞いたことある曲だ。その曲に乗せて、彼女は美しい踊りを踊っていたんだ。  彼女は言った。  カカオ豆はだんだんと(じゅく)して、コーヒー色になるの。もっとも、コーヒー豆も最初は緑色で、黄色になったり、赤くなったりするから。コーヒー豆ってカカオ豆になんとなく似ているね。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加