チョコのなる木

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 二度寝(にどね)から目覚めてみると、ぼくはSNSを確認したけど、まだ返事はなかった。お腹がすいたので、小銭(こぜに)をにぎりしめて、近所のカフェに行く。古民家(こみんか)を改装したカフェだ。この田舎町(いなかまち)で、数少ないこじゃれたカフェの中のひとつである。黒ぶちメガネをかけたカフェのマスターがぼくの寝ぼけた顔を見て、こうつぶやいた。  おはよう、ボウズ、今日は朝食なしか。  ぼくはその言葉に対して、少しめんどくさそうにこう(こた)える。  ボウズじゃないよ。16歳だし、もうオトナだよ。母さん、今取材旅行中なんだ。  そうかそうか、これは悪かったなあ、ワカゾウ。なんちゃって。またきみの母さんは海外旅行かい。オトナだったら、これなんか口に合うだろう。  ぼくは、お礼を言いながらマスターが差し出してくれた丸いかたちのチョコレート菓子(がし)を一口ほおばった。  ありがと、って、あれ、これなに。チョコレートじゃない。すごく苦い。  マスターはぼくの反応を見て、ケラケラと笑っていた。
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