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食事をすませて店を後にしたぼくは、ひとりぼっちの家に戻るのがなんとなくおっくうになり、近所の子どもたちが遊ぶ公園のベンチに腰かけた。ハッピーバレンタイン、か。あの娘は、今ハッピーなのかな。公園のベンチでしばらくぼーっとしていると、急にスマートフォンが鳴り出した。あれ、母さんからの国際電話だ。めずらしい。いつもはメールだけなのに。
もしもし、母さん、どうしたの。
ぼくがふしぎに思いながら電話に出ると、母さんが、興奮した様子でこう一気に話しはじめたのだった。
真斗、ねえ聞いてよ。ベネズエラの情勢を取材している途中でね、ほんとうに偶然なんだけど、彼女に会ったのよ。誰でしょう。そう、そのまさか。テレサちゃんよ。ほら、あなたのSNS友だち。ちょっと待っていてね。今彼女に替わるから。
え。どういうことだろう。なぜ母さんが、テレサと出会えたのだろうか。ああ、とにかく、まだ心の準備が。
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