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一人の部屋で、首を窓へと向ける。
今日は快晴。
光が差すガラスの向こうで、小鳥が高らかにさえずっている。
おそらく彼らは、目的がどうとか、権利がどうとか考えて歌っているわけではない。
自らが、歌いたいから歌っているのだ。
だからこそ、その声は俺のようなささくれた内にも沁みるのだ。
俺の、やりたいこと。
したいこと。
それを思ったときに、瞬間、姫の笑顔が頭を過ぎった。
どんな困難な状況下でも、彼女は真っ直ぐ、立ち向かっていた。
そんな彼女を支えたい、力になりたいというこの気持ちは、果たして、どこから湧いていたのだろう?
最初は、哀れみからだった。
それが変化し、義務となった。
依存、という言葉を勇者は使っていた。
現時点では、おそらくそうだろう。
ではもし、姫の代わりの、別の何かで毎日を満たせるのだとしたら、俺は彼女への執着を捨てることができるのだろうか。
それでももし、この気持ちが揺るがなければ、依存や執着とは違う、もっと別の感情を、俺は姫に対して抱いている、ということになるのだろうか。
今の段階では、わからない。
しかし俺は、自身の心に潜り、本音を引き上げ真正面から向き合うべきだ。
そして認識すべきだ。この思いが何であるのか。
そうでないと、前へは進めない。
……そのためにはやはり一度、距離を置く必要があるのか。
そこまで考えが巡った時、一筋の涙が、知らぬ間に頬をつたっていた。
そうか。
別れの時なのだ。
姫との、そして今までの俺との、決別の時。
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