クロードという男2

3/77
764人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
「ここいらから一番近い集落は、北にしばらく行ったところにあるドーソン村です。でも正直言って、何もないですね。宿もあるかどうか……」 「でも、そこ以外には待てそうな場所、ないですよね?」 「えぇ。だいぶ戻らないことには……」  私は懐中時計を確認する。  午後7時を回ったところ。  これ以上御者を働かせるのも、何だか悪い。 「じゃあ、その村に行ってもらえますか?」  こういう行き当たりばったりの旅が苦ではないところが、私の(唯一かもしれない)いいところなのかもしれない。  こうして私達は、豪雨の中、ドーソン村に一時滞在することとなった。 「宿屋もないって、そんなに田舎な村なのかな」 「でしょうね。でも私、どこかでこの村の名を聞いたことがあるような……」  リアムが首をかしげる。  そうこうしているうちにたどり着いたドーソン村。    うん、予告されてたとおり、なんにもない!    店っぽいものもない。  1件だけ見つけた酒場は明かりがついておらず(この雨のせい?)  道の両脇には畑と牧場、そして小さな民家がちらほら。 「やっぱり、なさそうだねぇ、宿」  窓から外を見ながら、私はため息をつく。  と、その時。
/680ページ

最初のコメントを投稿しよう!