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「今回は、このような身なりにも関わらず、わたくしとわが執事を保護してくださり、誠にありがとうございます。感謝いたします」
深々と、礼をする。横にいたリアムも同時に腰を曲げた。
頭を上げると、目を丸くした木こりの姿があった。
「え、いやぁ、その、おらぁ、こんな……姫様に頭を下げられるなんて、というか、人に頭下げられるなんて……初めてでぇ……」
どうすればよいのかわからないらしく、おどおどと手を上げ下げしている。
私は「また必ず、礼をしに参ります。あと、ババ抜きの続きも」という言葉を残し、彼に背を向け、扉を開けた。
驚いた兵士は、思い出したかのように「一同、礼!」と叫ぶ。
こうして私は、馬車に乗り込み、城へと向かった。
……それにしても、木こりとの別れる際の私、結構、かっこよかったよね?
姫っぽかったよね?
先ほどのシーンを頭の中で何度も脳内再生していると、思わず笑みがこぼれた。
「思い出し笑いですか?気持ち悪い」
相変わらずリアムは、容赦ない。
こうして私は、魔物の手から逃れることができた。
やっぱ、結局、『勇者さま』は来なかった。
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