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いやまあ、確かに一大事かもしれないけれど、急につかむの、やめてくれない?
その……私、慣れてないんだからさ。
そう言いたかったけど、
言ったら言ったで私がなんか変に意識してると勘違いされても困るので、そのまま口を強く閉じた。
それにしても、冷たいね。リアムの手。
そういえば、最初に彼と出会ったときも、
リアムの手は、冷たかった。
***
にぎわう表通りから逸れた、一本の裏道。
暗くて湿っていて、あちこちに葉巻やごみが落ちてる、
そんな通りのつきあたり。
「なんであなたはそんなところにいるの?」
「……行くところが、ない……」
「行くところがない?じゃあ、私のお城に来ればいいじゃない!」
私はしゃがみ込み、うずくまる少年に手を差し出す――
***
「姫、姫っ!!」
ぼんやり物思いにふける私の頬に
重いビンタがお見舞いされる。
「いたっ!!えぇ!なに!平手打ち!」
「呼んでも反応がなかったものですから」
「いや、それでも急にビンタはないでしょう?一応姫だよ、私」
「そんなことより、行きますよ。
勇者の家は、この通りの先です」
リアムに引っ張られる形で、私は人込みに足を踏み入れた。
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