リアムという青年3

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しばらくの間、沈黙が続く。 俺は、勇者がこの静けさに耐えかねて席を立つことを望んだが、彼は小さく笑みを浮かべながら、外を見たり、俺の顔に目線を移したりしていた。 「あの」 「なぁ」 俺が口を開いたのと、勇者が言葉を発したのは同時だった。 「何です?」 「いやいや、お先にどうぞ」 俺は眉をしかめるも、その笑顔に押され、続ける。 「……姫は、クルム薬草店で働くと言っておられました。その辺りの話を、聞いておられますか? おそらく前回の旅が起因だとは思いますが。 ツテがあるということでしょうね? 護衛の面では大丈夫なのでしょうか? 王族を退いた者が職場の人間と関係を構築するのは、一般人のそれより難しいと」 「何だよ。またそれかぁ。 お前が元気なら、なんでやねん!!ってハリセンツッコミ入れるところだわ。 お前さ、そういうとこだよ。 いつもいつも、過保護過ぎ。 ハンちゃんを信じてないのか?」 「信じていませんよ。あの方は自分の能力を過信するところがある。 いつも無謀で、無茶ばかり。 付き合うこちらの身も」 「俺が言いかけたこと、言うよ?」 勇者が俺を遮る。 「俺はさ、ハンちゃんが、ってより、むしろ執事くん、君の方が、一旦ハンちゃんから離れるべきだと思う。 君は、自分の人生をハンちゃんに依存しすぎだ。 それは、マトモな人間関係とは言えないんじゃないか?」 「依存?」 俺はフッと鼻を鳴らす。 「馬鹿な。私は誰がいなくとも、大抵のことはできますよ。実際そうして今まで生き抜いてきた」 「外側の問題じゃねーよ。内側の話。 君の心の中の話。 空の巣症候群って言葉、知ってるか? 子供が独立して、喪失感に苛まれる親の心理を指した言葉だよ。 今の君には、それに近いものを感じる。 昔屋敷でね、年配メイドがよく言ってたんだよ。寂しい寂しいって。 だが、君はそれよりたちが悪い。 ハンちゃんが心配とか難癖つけて、自分の気持ちと向き合ってねーんだ。 寂しいのは、君だろ? 一緒にいないと困るのも、やってけない不安を感じてるのも、君の方だ。 そこのところを、履き違えるなよ」
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