リアムという青年3

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とっさのことで、返答に窮する。 本来なら、すぐにでも反論したかった。 が、自らの脳内にある様々な論証をかき集めても、それらは口に出す前に、はらはらとこぼれ落ち、気化していく。 それらがすべて、偽りのものだから。 分かっているのだ、自分でも。 充分に、認識している。 彼の言うことは真実だ。 姫に依存しているのは、紛れもなく、俺の方だ。 彼女で日々を満たすことによって、俺は現実から逃げることができた。 自分の今後とか、未来とか、夢とか、そういう、あるかないかも分からない、不確定で不確実なものの全てが、俺は心底怖かった。 俺は今までずっと、誰かに飼われてきた。 今更鎖を外されても、どこに進めば良いかわからない。 何かに繋がれている方が、楽だ。 だから逃したくないのだ。この手から姫を。 彼女のために生きているという、自身に対する言い訳が欲しいのだ。 今の俺から姫を取ったら、何も残らない。 そんな空っぽの自分と向き合うのが怖いのだ。 それが、醜く歪んだ、俺の本音だ。 「……分かっていますよ。そのくらい」 こぼれ出た言葉は、俺の想像以上にか細く、震えていた。 勇者はふぅとため息をつくと、立ち上がる。 「それなら結構。 ハンちゃんはハンちゃんで好きにするだろうから、君も君で好きにすればいいよ。 離れたほうが、ってのは、あくまで外野である俺の意見だ。 君が一緒にいたいのなら、連れて行ってほしいと、泣いてすがるのもアリなんじゃね? やりたいように、な。 これは、君にとってもチャンスだと思うぜ。 自分が本当はどう生きたいのか、どうしたいのか、お前主体で考えてみろよ」 そう言い残して、勇者は手をヒラヒラと振りながら、部屋を後にした。
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