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しばしの沈黙の後。
「……ちゃんと帰ってきてよね」
眉をしかめながらも、そんな言葉が帰ってきた。
街を出る際も、ミーアさんはわざわざ宿屋の前まで出向き、見送ってくれた。
「今日もダンスレッスンあるんでしょ?もういいよ?」
「大丈夫よ。私、レッスン受けなくても上手いから」
そうサラッと言ってのけるミーアさん。
私はてっきり、「彼氏」であるリアムとの別れを惜しんで、ここまでしてると思っていたけれど。
あれ、そういえば、いつの間にかミーアさん、リアムにベタベタしてないな。
普通なら、「行かないでダーリン!」みたいに、ボロ泣きしながらすがってもいいように思うけれど。
「あの、私に構わず、お別れのチューとか、していいからね?」
リアムの反応が怖いので、私はミーアさんの耳元でそう、コソッとつぶやいた。
でも。
「なに?なんで私がこいつにチューしなきゃいけないの?」
普通の音量でしかも真顔で尋ねてくるミーアさん。
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