34人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
そんな彼らを、和尚は大きなテーブルの下から次々と丸椅子を引き出して、どこか嬉しそうに誘う。
「とにかく、みんなお掛け。
朝食を囲みながら、ゆっくりと話を聞くとしようじゃないか」
そこに、
「おはようご……」
のっそりと徳鎮が現れたと思うと、大きな体が入り口でギクリと凍りついた。そして、にわかに踵を返しかける。
「逃げても仕方がないよ、徳鎮さん」
老和尚のおっとりとした呼びかけに、徳鎮の動きが止まった。
そして、視線を俯かせ、おずおずとした態で戻ってくる。
「もうお前さんは、予告を受けてしまったんだから。
逃げていても、彼らは消えてはくれないよ」
腹を括りなさい。
諭された徳鎮は、大きな肩を落として、とぼとぼとテーブルにつく。
そんな彼らの目の前に、絵実は用意をした朝食を次々と並べた。
「いいですねぇ。
卵焼きに煮っ転がし、あとは熱々の味噌汁と白いご飯。
あぁ、美しき日本の朝食です」
宗太郎が、どこか懐かしそうに目を細めてしみじみと言う。ところが――。
「えっ……?」
当たり前のような顔をした絵実の手で、目の前に味噌汁と熱々の飯を置かれたお吉が、戸惑いを浮べた時だった。
最初のコメントを投稿しよう!