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「確かに、そうなんですけどね。 でも、やっぱりこうして実際目にするとねぇ。 いやはや、なんとも……」 けっ! ひとのことを見世物扱いしやがって。 お吉は額の三角布を外すと、やや乱暴に懐にねじ込み、憮然とそっぽを向いた。 そこに、 「おはよう」 穏やかに掛けられた老和尚の声に、一同の視線がスルリと向く。 しかし、相変わらずのこの和尚は、「おや、随分と早くからお揃いだね」とにこやかに笑いかける。 ところが、和尚の言葉に、なぜか優衣がプクゥと頬を膨らませた。 「だって昨夜はさ、自己紹介どころじゃなかったんだもん。 なんか、すんごい数の幽霊が次々来ちゃってさ」 「仕方ないでしょう。 なんといっても、予告が下りたのがお坊さまですからね」 同じ「金色」の予告でも、聖職者に下りたとなると期待が膨らむのは、肉体の有無に関わらず人情というものらしい。 「お陰で、こちらもいい飛ばっちりですけど」 宗太郎が、疲れた顔で、またも大きな欠伸に口を広げる。
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