2-2

1/19
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ

2-2

本堂の畳の上で膝を抱え、お吉は、ぼんやり空を見上げた。 冷たい空気を従え、この日も広く澄み渡った空は青く、小さくスズメの声がしている。 その下で、朝食を終え境内の掃除に出てきた徳鎮を、たくさんの幽霊が取り囲み賑やかな声をあげ、その少し後ろの方で西村が一人ポツンと立っている。 だが――。 何やってんだろう、あたしゃ。 お吉は、遠く彼らの声を聞きながら、胸の内で小さく呟いた。 しかし、問題は何をやっているのだではない。この混乱は、自分がどうしたら良いか分からないからだ。 とにかく、図らずも肉体を取り戻してしまったのだ。 それはつまり、腹も減る。生きている人間のどの目にだって、ちゃんと映る。 そんな現実を、実感として味わった味噌汁が、生々しく突きつけてきた。 はあ……。 お吉は、太く息をついた。と共に、ふっと味噌汁の味が舌先に蘇る。 確かに昨日は、幽体だった日暮れはもちろん、肉体をもった昼間も腹が減った記憶はない。 しかしさっきは、はっきりと空腹を自覚した。 だが、いま分かっているのはそれだけ。 自分が置かれた現状は、他に何ひとつ定かではないままだ。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!