11人が本棚に入れています
本棚に追加
当時のEさんはタレント人気に火が付いた頃で、あちこちのテレビ番組に出演されていました。ゴールデンタイムの特番にも出演されていて、僕は夕飯を食べながら、それらの番組を見ていたのです。
ある時の番組で、Eさんはどこかの地方の山中にいました。林道がずっと続いているような場所にいて、夜なので道の両脇は真っ暗です。
「ここはスゴイですね……」
Eさんは小声で喋りました。だれもいない山中なので、大声で喋ってもよさそうなのですが、なぜか小声です。
Eさんは、地元では有名な心霊スポットと呼ばれる場所にいて、そこからの放送(もちろん録画)という形式になっていました。
「あそこに霊がいますよ。ちょっとカメラを向けてください」
しばらく林道を歩くうちに、Eさんは霊を発見したようでした。Eさんの発言で、現場のスタッフに緊張が走る様子が、画面から伝わってきました。僕はご飯を頬張りながら、テレビの画面に見入っていました。すると……。
僕の脳裏に、大鎧に身を固めた一人の武将があらわれました。
ざんばらに乱れた月代。蒼くて四角い顔。視線が鋭い中年男性の落ち武者の霊です。
最初のコメントを投稿しよう!