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 今まで騙し騙し飲み続け、Ωであることを隠し続けて来たが、そろそろ圭志の身体も限界に近づいてきているようだ。そうなったらもう、この会社にはいられない。  αであると言い続け、次期課長の椅子にまで上り詰めたΩ。 しかし、その事実を知られたら、上層部は即刻なかったことにするだろう。  そして、本社に影響を与えることのない小さな支店にでも飛ばされるのがオチだ。  いくら努力してもΩの限界はすぐそこにある。  αと肩を並べることも、さらに彼らを超えることも許されない。  分かってはいる。でも――許されない相手に抱いた恋心は、そう易々と治まってはくれなかった。  日に日に増していく仁への想い。それは今まで以上に彼を必要としている。  あの夜から、彼を想っての自慰がやめられない。何度自身を慰めても、達することの出来ないもどかしさと寂しさに毎晩押し潰される。  心と体に傷を負ったあの時から自然と遠のいていた行為。自身の中ではもう枯れ果てたと思っていた体が、仁の舌先によって再び燻り始めてしまったのだ。底知れぬ快感と幸福感を知ってしまった今、いつ燃え上がってもおかしくない。  それだけはいけないと自制し続ける日々。 (イキたい……。イカせて欲しい……)  そればかりを望んで仕事にも集中出来ない。やはり、子を成す為だけに与えられたΩの血には逆らえないのだろう。疼く体を持て余し、あの快感を得られるのであれば誰に抱かれてもいい――一度は死んだはずの淫らな血が覚醒してしまった。 「――っく」  息苦しさに胸元を押え、デスクに片手を付いた。  それを見た仁がわずかに目を見開く。咄嗟に差し出された手を乱暴に払いのけ、圭志は彼に背を向けるようにして歩き出した。 「古崎さ……係長っ」  今までのように言いかけて、慌てて言い直す。それもまた仁にとっては大きなストレスになっていた。  仁の声を振り切るようにフロアを出た圭志もまた、その呼び方に恐怖を感じていた。
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