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テレビの画面が真っ暗になった。たった独りで、ダイニングで食パンをかじっていた少年、風谷虹輝がリモコンの電源ボタンを、叩きつけるように押したからだ。
息を肩でして、震える手で、自分のズボンをにぎりしめている。
この少年は1才の誕生日の日、両親を事故で失っているのだ。
今から、9年前の事だが、今でもあの日を忘れた事はない。
目をつむると、優しい両親の笑顔がうかんでくる。
いや…。あれは事故なんかじゃない。殺人事件だ…。と、虹輝は思っていた。
あの日、虹輝は祖母の家に預けられていた。
夕方に、自宅で開く誕生日パーティの飾りつけと、プレゼントを買うために、父親の運転する車で、近くのデパートへ来た帰り、ガードレールを突き破り、崖下まで転落した。
乗っていた母と父は、即死だったそうだ。
警察の言い分は、飲酒運転による、転落事故。
しかし、虹輝の両親は、酒に手をつける事はしないのだ。
祖母は、最後までそう主張したのだが、公正な裁判の結果、事故として処理された。
公正なんて、あるのだろうか、あれはきっと、上から圧力がかかっていたのだろう。
と、言うのも、虹輝の父は、名刑事、母は名検事、2人とも真実を暴く天才だったが、警察組織の不正まで暴いた事があったので、上から快く思われていなかったのだ。
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