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「せっかく助かった命を再び捨てるつもりか? もはやお前には関係あるまい。
今から俺達はお前を捨てた国を滅ぼす」
国が彼を捨てたのは間違いない。彼が、彼らの笑顔を捨てられなかっただけ。
それだけの話。
剣の力は強大で、みるみる敵は消えうせる。
脅威を感じた見知らぬ敵は、すぐさま撤収を呼びかけた。
彼は立っていた。そして、すぐに倒れた。
遠くから聞こえる鬨の声。彼の守りたかった彼とはもうかかわりのない国が、敵の撤収を指差し自分達の勝利をたたえる声が聞こえた。
ずっと、聞いていた。
もう立ち上がらない、ただの青年。
自分は果たして守れなった。
自分の笑顔と世界は守れなかった。
彼は目の前に。
黒猫が座っているのを見つけた。自分を見つめるその目を見つめた。
呟いた。
「お前のことも、どうやら守ってやれない。ごめん」
彼は目を閉じた。
黒猫はその頬をぺろりと舐めた。
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