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草原から煙があがっている。いや、ここは草原と呼んでよいものなのか。見渡す限り、死骸で溢れかえっていて、草原の草など生き物の死骸の隙間からちらりと見えるくらいだ。緑よりも、死骸の灰色の肌、赤い血が目立つ。
死んでいるのは人間、魔物・・・魔物の方が圧倒的に多い。
遠くで歓声が聞こえる。勝利を祝う、英雄たちの唄だろうか。この惨状を目にしても、素直に勝利を喜べるというのはいかがなものか。いや、そのくらい図太い神経でなければ英雄などやっていられないのかもしれない。
遠くの歓声を聞き、わすかな生き残りの兵士たちも抱き合って喜ぶ。己の生還を。涙を流す者もいる。そして、最前線で唄う英雄たちの下へ駆け寄る。英雄たちの周りに黒い人だかりが見える。
けれど、俺はそれには近寄らない。腰のナイフを握りしめる。
さあ、仕事の始まりだ。
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