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手紙
「本当にいろんなものがあるわね。」
「そりゃあそうよ。
何年ここに住んでると思ってるのよ。」
父が亡くなり、私は久しぶりの実家に戻った。
昨年は用があって戻れず、一昨年の大晦日に戻ったっきりで、きっと、次にここに戻って来るのは、また大晦日だと思ってた。
だけど、父が急な病に倒れ、大晦日を待たずして戻って来る羽目になってしまった。
母と一緒に父の遺品を整理しながら、懐かしさと寂しさについつい瞳が潤んでしまう。
「真由子、今日はこのくらいにしておこう。
あんた、まだ休みは取ってあるんだろ?」
「うん、今月一杯は大丈夫だよ。」
「じゃあ、急ぐことはないね。」
私達は、茶の間に向かい、二人でお茶をすすった。
いつも父が座っていた場所に誰もいないのは、どうにも寂しい。
「今夜は鍋でもしようか。」
「そうだね。」
「じゃあ、私、買い物に行って来るよ。
あんたはどうする?」
「ん?私は……家で待ってるよ。」
母が買い物に行くのを見送り、私は茶の間に戻った。
やっぱり一緒に行けば良かったかと思いながらお茶をすすり、ふと、自分の部屋の片付けを思い立った。
私が家を出てからも、私の部屋はそのまんま。
ここで暮らしてた頃と何も変わらない。
これからもそのままでも良いのかもしれない…でも、もしも、父さんみたいに突然のことがあったら…
私は長年使った棚の一番下の引き出しをそっと開けた。
(懐かしいな…)
ここには長年書いた日記が何冊も入ってる。
多分、中学生くらいから私がここを出るまでの間のものが…
いつか処分しようと思いながら、溜まってしまうと処分はなかなか面倒で、ついそのままになってしまっている。
うちにはシュレッダーなんてしゃれたものはないし、焼くのもご近所のことを考えると気が引ける。
(一冊一冊破って捨てるしかないかな…)
考えるだけで溜息が出そうになった。
(困ったな…)
私は何冊もの日記帳の中から、適当に一冊を抜き取った。
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