親愛なる魔女に捧ぐ

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「ねぇ、ルルカ。今日は何の日か知ってる?」 「ん?知らないねぇ。お前の誕生日か何かかい?」  物心ついた時から共に過ごしている魔女のルルカが、酔いそうなくらい甘い匂いを発しながらチョコレートを作っていた。目線は手元のまま、俺の問いにお道化たように答えた。 「俺の誕生日はルルカが拾ってくれた日だって言ってるでしょ?」 「おや、そうだったかねぇ」  ガサガサと可愛らしい包装紙を弄りながら返ってきたのは、年寄りのようにのんびりと間延びした返事だった。ルルカは、口調こそ年寄りのそれだが、見た目は二十代くらいの若い女性だ。声だってまだ高くて澄んでいるし、顔には皺の一つさえ見当たらない。魔女だから、実際何歳なのかは不明だけど。 「今日はね、バレンタインっていう日なんだって」 「へぇ、それはどういう日なんだい?」 「人間が好きな人にチョコレートをあげる日なんだって。基本的には女性が男性にあげるらしいよ。この間、街をこっそり見て回った時に聞いたんだ」  檜の机の上に置かれた菓子をつまみながらルルカに教えた。相変わらずルルカは、キッチンスペースでなにやら作業をしている。
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