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第十四話 友
夜、博奈高校に通う一人の少年が部屋で親友と電話していた。
『何だよ、体調不良って言ってたから心配したけど、元気そうじゃん』
「いやいやそんなことないって」
少年がおどけたように笑う。親友は、その日病欠で休んだ少年を心配していたのだ。実は病気ではなかったものの、少年にも学校に行けない理由があった。
『まあいいけど。明日は学校来るのか?』
「おう、かならず行くよ」
少年は明るく答えると、通話を終えた。ホーム画面を見ると既に九時。彼は風呂にでも入ろうと机に携帯を置いた。
その時、
――ブゥゥゥゥゥン。
控えめなバイブ音が静かだった部屋に響いた。音の調子からメールだと分かる。
「ん?」
少年は訝し気に眉をしかめると、再び携帯を手に取った。そして、メールboxを無造作に開く。
「――何だこれ……」
驚愕に声を震わせた。見たこともないアドレスからのメール。件名はなく、本文には簡潔な内容が書かれていた。
――『電央ビル』の屋上まで一人で来い。さもなくば殺す――
『電央ビル』とは、電気街の中央にある商業ビルである。地上十階建てで、各フロアにアパレル店、雑貨店、本屋、食事処など幅広く店が出揃っている。
指定された屋上は、よく食フェスイベントなどが開催され、常に賑わっている。
少年は、不審なメールを気味悪がりながらも、ただの迷惑メールには思えずすぐさま外出の身支度を整えた。愛用の眼鏡を机に置き、家を出る。
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