第零話 中東生物災害

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第零話 中東生物災害

 ――『蠱毒(こどく)』という呪術をご存知……だろうか。  それは、壷の中で無数の毒虫に共食いをさせる。  そして、最後に生き残った虫こそ――モットモオゾマシク……最凶ノ……『厄災』トナル――  …………………………  ――それは『中東生物災害』と呼ばれた事件。  中東の雑多な街に響く銃声、怨嗟の絶叫、積み上げられていく死屍累々。その凄惨な戦場に、二人の少年兵の姿があった。  鈍色なボロボロのマントを羽織り、ヨレヨレの戦闘服に身を包んだ少年『黒野(くろの)(かげ)(ひと)』とその弟『黒野宗次(くろのそうじ)』だ。年齢は影仁が十三歳、宗次が十二歳。  まだ幼かった影仁と宗次は、早くに両親を亡くし兵士として訓練され、戦場の最前線で戦っていた。しかし、影仁は淡々としており人生に絶望もしていなかった。ただ生き抜くことができれば、それでいいと。そのためであれば、人を殺すのもやむを得ないとさえ思っていた。
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