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――――――――――
「はぁ、はぁ……」
金髪男は繁華街へと続く橋の下でへたり込んでいた。右手首は変な方向に曲がり、痛みで脂汗をかいている。
「くそっ!」
憎々し気に顔を歪め叫ぶ。
「なんなんだよアイツは! アニキも俺を置いていきやがるしよ! くそぉ……」
金髪男は毒づき顔を上げた。
すると、
「っ!」
目の前にいた。
死神が。
否、髑髏の鬼が。
「た、たすけ――」
命乞いをする間もなくその首は胴体から離れていった。
――ドサッ!
「キヒッ、ヒャハハハハハハァッ!」
その日、死の鬼は再び産声を上げた。
――――――――――
「――見つけたぞ」
死鬼が去っていった橋の大柱の影、携帯を耳に当て通話している人影があった。
「あれは間違いない。俺らと同じ『鬼人』だ」
腰ほどまでの長さのある真っ白な髪。スラッとした長身痩躯は黒のライダースーツによって際立っていた。不機嫌そうに見える表情、猛禽類のような鋭い眼差しは、普段のもの。並びの悪いギザギザの歯は、獣鬼の歯のように鋭く尖っている。
「――ああ、分かってる。もう少し様子を見てから声を掛けるさ」
男は、その言葉を最後に通話を切り、音もなく消えた。
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