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「知性の欠片もない普通の獣鬼なら、ボーっとしてるのも頷けます。でも、知性のある彼らは本当に昼間もぶらぶらと彷徨っているのでしょうか?」
「…………なるほど」
清悟は目を見開き、深く息を吐くように呟いた。
姫川も思案顔でその細い指を顎に当てている。そして、ゆっくりと低い声で推測を口にする。
「もし……もし、昼と夜で変化するのが身体能力だけで知能は変わらないのなら、昼間は人間社会に紛れ込んでいる可能性が高いですね」
悠哉は身震いした。今まで倒してきた異形の怪物が、自分たちと同じ社会に溶け込んでいるという可能性に。
「次に考えられるのは、『協力者』か。死鬼はともかく、半鬼狼のメンバーは少なくとも五人はいる。その人数が何の違和感もなく我々の日常に溶け込み、正体が露呈していないとなると、彼らに手を貸している人間がいる可能性が高い」
清悟の考えに、姫川も頷いた
「となると、関係者は限られてきますね。防災局、警察、医療関係者、警備会社と……」
「聞いたことがある。岩戸病院で行われている研究の中には、オニノトキシンを使った『医療技術の進化』を目指したものもあると」
悠哉と姫川が光明が指したかのように顔を上げる。その瞳には、光が宿っていた。
清悟はすぐに立ち上がり、椅子に立てかけてあった背広を腕に抱いた。
「俺はすぐに『特別災害対策本部』へ掛け合ってくる。君たちは調査課へ行って、動員できる人員の手配を依頼してくれ。本部の許可が下りると同時に、動けるようにするんだ」
調査課とは、会社の情報や各部署の営業実績の管理、他の支部との連携をとる部署だ。さらに、飛鳥の常駐する拠点においては、獣鬼の調査や地方警察との情報共有なども行っている。
清悟は、調査課を大々的に動かすために本部を巻き込もうとしているのだ。
「「了解!」」
姫川と悠哉もすぐに立ち上がり、清悟に続いて会議室を後にした。
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