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自分の身に迫る危機を知らない光汰は、その日も闇夜に紛れ街のパトロールをしていた。人目につかないよう極力暗い道を進む。人とすれ違う際は下を向いて歩く。
ここ何日もパトロールし続けているが、一向に死鬼とは遭遇しない。今は、街の外れにある港区に来ていた。辺りに物流関係の倉庫や工場が並んでいる。
「やっぱ、こんなところにはいないか……」
「そりゃそうだよ」
後方を歩いていた薫がクスクスと笑う。
「弓岡さんだって止めなかったじゃん」
光汰が口を尖らせ、ジト目で薫へ振り向いた。
「まあまあ、絶対にないなんてことはあり得ないんだから、確かめるだけ無駄じゃないよ」
薫は気にせずそう答える。真黒なセーラー服に半人半鬼の仮面を付け、腰に細剣を携えているというのに、発する声は鈴を転がすような可憐な声なのだから、えらくミスマッチだ。
二人は港区を去りしばらく歩いた。
街外れの公園に差し掛かると、
「あれ? 女の子?」
薫は、公園のベンチに蹲って寝ている少女に気付き駆け寄った。
「君、どうしたの?」
薫が体を揺さぶると、少女は目を開け身を起こした。そして、自分の顔を覗き込む相手の顔を確認する。
「ひっ!」
少女の顔が恐怖に歪んだ。当然の反応だ。なにせ今の薫は、不気味な半人半鬼の仮面を被っているのだから。
「あ、ごめんなさい」
そう言って仮面を上にズラし素顔を晒すと、少女は安心し薫に事情を話し始めた。
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