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少女は『涼』という名で中学一年生だった。家で両親と口論になり、家を飛び出してきたようだ。家出するつもりでいたが、少し寝たことで冷静になったと語った。今の時間は深夜の1時。彼女の両親もさぞ心配していることだろう。
「じゃあ、涼ちゃんはもう帰るのね。家まで送って行くよ」
薫は特に迷惑そうな様子を見せることなく微笑んだ。理想のお姉ちゃん像とはこのような女性なのかと、光汰は思った。
(いや、あの妹に苦労させられたんだろうなぁ)
光汰は弓岡姉妹のやりとりを想像し苦笑する。
薫は少女と手を繋ぐと、蚊帳の外にいた光汰へ振り向いた。
「じゃあ、伊刈くん。今夜のパトロールはここまでで――」
言いかけた薫の言葉が止まる。彼女は目を見開き、光汰の後ろを見ていた。
その様子に悪寒の走った光汰は背後を振り向く。
「…………」
ゾウの形をした滑り台の上に死神がいた。否、鬼の髑髏の仮面を付け焦げ茶色のマントを夜風にはためかせた『死鬼』が。その紅い瞳はじっと光汰を睨みつけている。
「涼ちゃん、逃げて」
敵から目を逸らさずに、緊張感を孕んだ声で薫は言った。
「え?」
少女は状況が分からず、混乱している。
「ごめんなさい。お姉ちゃんは用事ができたから、すぐに帰って」
「う、うん」
有無を言わさない薫の切羽詰まった声に涼は従った。
異様な寒気を感じながら逃げ出すように走り出す涼。
「――っ!」
突然、死鬼が跳んだ。
その着地点は、涼の進行上。
「くっ! 待て!」
光汰が慌てて走り出すも距離は遠い。
(あいつ、自分を見た相手は必ず殺すようにしてるんだ)
光汰もしかり。雅人が倒れた夜、駆けつけた光汰は死鬼の標的となっていたのだ。
「い、いやっ!」
正面から涼へ手を伸ばす死鬼。
間に合わない光汰。
しかし、
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