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「かはっ!」
光汰が駆け寄ると、薫は吐血した。何とか呼吸はしているが、「ヒューヒュー」と瀕死の様相を伺わせる。
「弓岡さん! しっかりして!」
光汰が揺さぶるが、薫は呼吸をするので精一杯といったように反応できない。
「てめぇ」
光汰が激怒を声に滲ませ、死鬼を睨みつけると、死鬼も何食わぬ顔で光汰を見下ろしていた。
そこに、インカムから慌てたような桐崎の声が入る。
『どうした、光汰くん! 薫くんは無事か!?』
光汰が通話をオンのままにしていたことで、現場の状況が伝わったのだろう。
「弓岡さんは何とか生きてます! 早く病院に連れて行かないと」
光汰の声は焦りで早口になっていた。
『光汰、影仁だ。そこはどこだ? すぐに向かう』
「街外れにある勇往公園です。影仁さんが来るまで、何とか持ちこたえてみせます」
光汰は、立ち上がり背の薙刀を構えた。その足と手は小刻みに震えている。
しかし、桐崎の反応は予想外のものだった。
『いや、君は逃げろ。勝ち目がない』
光汰には信じられなかった。あの優しい桐崎が「仲間を見捨てろ」と言ったのだ。それに、ここで光汰が逃げれば、涼だって狙われる。逃げるという選択肢など論外だ。
「そんな……弓岡さんはまだ生きてます」
しかし、桐崎と影仁の判断は合理的だった。
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