第十三話 死闘の果て

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 時は遡り――  影仁は夜風を切り全速力で駆けていた。 (あのバカが……)  影仁は言いようのない複雑な感情を抱き、拳を握りしめる。  光汰がインカムを外す直前に言い放った言葉が理解できないでいた。 (いや、本当は分かっている)  光汰のまっすぐさが、実の弟に重なるのだ。幼き日々、戦場を共に駆け、影仁の心を支えていた弟に。  だからこそ、光汰が死に急ぐの止めたかった。そこに理屈は関係ない。もちろん、薫とて見捨てるつもりはなかった。それでも、反射的に光汰に逃げるように言ってしまったのだ。 「桐崎」 『分かってるよ。もう手は打ってある。間に合うかは分からないけど……』  インカムを通した桐崎の声は、不安が入り混じったような不鮮明なものだった。 「光汰と薫は、必ず助ける」 『任せる。光汰くんと薫くんに謝る機会を僕にくれ』  桐崎の声には、後悔しているかのような重さがあった。その心境は影仁には分からないが、常に冷静沈着で正確無比な決断を下す彼の心を動かした光汰が、何故だか誇らしかった。  光汰たちが戦っている勇往公園へは、まだ数キロもの距離がある。由夢も後方から向かっているところだ。 (死ぬな、光汰)  影仁は逸る気持ちを抑え、さらに加速するのだった。
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