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十メートルは吹き飛ばされた光汰だったが、すぐに立ち上がる。
「くそ……」
その左腕は、だらんと垂れ動かなくなっていた。
そして、そんなことを気に掛ける暇もなく、死鬼の拳が光汰の目前にあった。
――ダァンッ!
再び光汰は吹き飛ばされる。
仮面は割れ、額から血を吹き出し、地を擦れ砂塵を巻き上げながら勢いよく転がる。
「かはっ! ごふっ!」
地に手を付き、苦しそうに咳き込む光汰。
それでも、まだ立ち上がる。
「俺は……まだ、死んでねぇ。」
死鬼を睨みつける瞳は、まだ光を失っていなかった。
死鬼は静かに歩み寄る。
「このぉ」
光汰は動く右手で薙刀を掴み死鬼へ突きを放つが、霞む視界で上手く狙いが定まらない。死鬼はもはや避けることも、受け止めることもする必要がなかった。
そして――
「シネ」
――死鬼の右腕が光汰の胸を貫いた。
「ぐっ……ぅ……っ」
その手は心臓に達している
光汰は目を見開き、すぐに大量の血を吐き出した。
「くっ……そ……」
光汰は震える両手で自分の胸を貫いている腕を掴む。しかし、力が入らずなにもできない。
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