第十四話 友

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 少年は駆け足で来たこともあり、三十分で目的のビルの入口まで辿り着いた。時間も遅いために、どのフロアの店舗も閉店している頃だろう。  周囲は居酒屋やスナックなど、仕事終わりのサラリーマンたちで賑わっている。  ビルの2階は隣のバスターミナルと繋がっていることもあり、入口の自動ドアは普通に開いた。少年は、そのままエレベータに乗り込み屋上を目指す。 「ふぅ……」  少年は溜息を吐いた。何かとんでもないことに巻き込まれてしまったのではないかと不安がる。それに、彼の気のせいでなければ、ビルに入るとき敵意を孕んだ複数の視線を浴びた気がしたのだ。気のせいだと思うには無理がある。    そうこうしているうちにエレベータは屋上に到着する。 「誰もいないじゃん……」  屋上はライトが点灯し、イベント後なのか露店のスペースやテーブルなどが綺麗に並んでいた。しかし、人ひとりいない。  少年が不安よりも沸々とした怒りを感じながら、中央へ向かって歩いていくと、背後でエレベータの稼働音が微かに聞こえた。  そしてそれが止まると、少年は振り返りエレベータから出てきた人物を見た。それは、黒のマントを羽織り、奇妙な仮面を付けていた。そして少年の方へ歩き始め声を発す。 「――まさか、お前が死鬼だったとはな……『直人』」 「…………キヒッ!」  直人は甲高い笑い声を上げる。そして、失った右腕の代わりに左手で顔の仮面を外す。彼は素顔を晒すと、愉快そうに口の端を吊り上げながら問うた。 「その声、まさか影仁か?」  影仁も仮面を外し素顔を晒した。 「俺はお前を許さない。仲間である雅人や薫を傷つけ、そして光汰を殺したお前だけは」  その声には明らかな怒気と憎悪が含まれていた。初めて知る影仁の反応に直人は目を見開いた。  やがて、直人は感情を映さない冷徹な表情を作り、厳かに告げた。 「そうかい……けど、親友だからって手加減はなしだ。来いよ、影仁」  影仁は仮面とマントを投げ捨て、駆け出した。そして、両手で腰の剣を抜き直人へ斬りかかる。 「うおぉぉぉぉぉっ!」 「ヒャハハハハハァッ!」
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