第二話 鬼の能力者

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 数日後、雅人は光汰を連れ、再び知人の墓に来ていた。  静かで穏やかな風が吹く中、雅人に並び光汰も墓石の前で目を閉じる。 「(あきら)はな、俺が殺したようなもんだ」   「え?」 『月上晶(つきがみあきら)』。その墓石に刻まれていた雅人の知人の名だ。  光汰は目を丸くした。  まさか雅人から語るとは思ってもみなかった。 「一年前、俺が働いてた現場で事故が起こった。建物の解体作業で順序を間違ったらしくてな、急に鉄筋が落下したんだ」 「まさか」 「ああ。運悪く下にいたのが晶だった。だが鉄筋の下敷きにはなったものの、まだ生きてた。もちろん、俺は誰よりも速く駆け寄ったさ。すぐに助け出そうとした。けど、俺の力じゃビクともしなかったんだ。他の作業員も遅れて駆けつけたが、同時に次の鉄筋が落ちた」  その先を聞くまでもなく光汰は心を痛めた。  雅人は自分の右手を見つめ、強く握りしめる。 「あのとき、俺は晶と右腕を失った。あとはお前も似たようなもんだろ。入院していた俺の目の前に影仁が現れた。そして俺は、この右腕を手に入れたんだ」  そう、その右腕の正体は紛れもなく獣鬼のもの。  影仁が雅人の右腕に『半鬼化薬』を注入したのだ。  それには、何倍にも希釈された『オニノトキシン』が含まれており、対象の欠損部分を再生させ鬼化させる。だが、その『オニノトキシン』の量は脳を侵食しない程度に調整されていた。  それにより、人は人でありながらして、鬼の力を手にしたのだ。  ――それこそ、半鬼狼誕生の真実。 「そんな顔すんじゃねぇ。俺は獣鬼に感謝してんだ。これで、俺が助けたい奴へ手を伸ばせるんだからな」  そう呟き、背を向ける雅人。  光汰は、その背中が誰よりもカッコいいと思えたのだった。
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