第三話 鬼を狩る組織

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「……二人とも静かに」  二人のやりとりを静かに見守っていた第七班のリーダー、『成田清悟』が立ち上がる。  彼は、短髪に精悍な顔つきで、鍛え抜かれた肉体はスーツに包まれてなお猛々しく脈動していた。せいぜい二十代半ばに見える童顔だが、その実三十代前半で妻子持ちでもある。 「状況を整理しよう。昨夜未明、西区にある住宅街の路地で『獣鬼』の死骸が見つかった。駆除者は見つかっておらず、獣鬼の頭は粉々に粉砕されていたようだ。一体どんな凶器を使ったのか定かではない」  清悟の声は硬かった。被害者が出る前に獣鬼を駆除するのは良い。しかし、その死骸を処理せず放置しては一般人の目に留まってしまう。それでは彼ら飛鳥が秘密裏に処理している苦労が水の泡になってしまうのだ。 「僕の勘ですけど、おそらく獣鬼をやったのは『半鬼狼』じゃないかと」  悠哉は少年のように目を輝かせていた。男というのものは、いくつになっても謎に包まれた組織に魅力を感じてしまう生き物なのだ。  しかし、眉間にしわを寄せた姫川に理解できるはずもない。 「『半鬼狼』ですか。その驚異的な身体能力から、違法薬物の服用……特に『オニノトキシン』の利用を疑われている謎の武装集団……何にせよ、獣鬼の死骸を捨て置くのはやめてほしいものです。私たちを挑発しているつもりでしょうか……」  『半鬼狼』は半年ほど前、都心部周辺に突然現れ獣鬼を狩り始めた。奇妙な仮面をつけており素性も分からず、『飛鳥』も野放しにするわけにはいかなかった。第七班の業務内容には獣鬼を狩る他に、半鬼狼の調査も含まれている。  清悟は「ふぅ」とゆっくり息を吐き、厳かに告げた。 「その可能性はある。だがまずは、倒された獣鬼の身辺調査と感染原因の特定を急ごう。半鬼狼の調査はその後だ。とにかく、我々の目的は『獣鬼』の脅威から一般人を守ることだ。これだけは忘れるな」  姫川と悠哉は頷くとまっすぐに立ち上がり、姿勢を正した。そして声を揃える。 「「了解」」
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